妹よ 04

そして、彼は答えた。

「大丈夫だ………貴方の叔父は、私の幼馴染みの一人を手塩にかけ“さすらいの戦士”にまで育て上げたうえ、まだ幼い私に真なる義理を教えてくれたのだから。つまり、貴方と轍雩の父と私の三人はむしろ切っても切れぬ関係にあるということ。………っは、まるでクラムチャウダー温泉だね」

「でも、お前の真の目的はやっぱり、叔父さんにつるんでいた昔の連中をブチのめすことじゃないのか!!」

「それをしてしまったら愛しの鬼神に祟られてしまうでしょう。すなわち、己そのものの終わりが来る」

「き、鬼神…………!!?」

「そう、羅刹天(ラークシャサ)のこと……破壊と滅びを司る、この世で最も崇高かつ妖艶なる鬼神のことだ。〈親知らず〉の私は生まれたばかりの頃、貴方が全く存在を信じていないであろう自分の故郷で羅刹天からの洗礼と加護を受けた。この装束も彼女に授かったものだよ」

「ま、まさか!! 妹の言った“異界”の正体、ひょっとしてお前の“故郷”なのか!!? 何なら俺自身よりもっと若くてかっこいい俺の上位互換みてえな存在がそこに生活しているとでも言いたいのか!!?」

「…………同じ北新地を縄張りにしているならば、そうである可能性は高いかもしれない。私も縄張りにしている対象はほとんど同じ地区なものでね」

「梅田様……」

〈毒蛾D〉はこの仮説を最後に残し、何十人ものエリュシオンの一行に率先して俺の元から走り去っていった。結局、彼の目的はさっぱり分からなかったが、本名がずばり「梅田」という、自分の棲みついている街を名札に刻むような苗字であることだけは分かったのだった。

(不死川紫音)