02/28/26

神韻のポスターはなぜ大阪駅前ビルに貼られているのか?雑居ビルと「解放」の同一価値論

とか言いながら、これを書いているのは翌日(3/1)。大袈裟になるけど、今年も、あの「神韻(シェンユン)芸術団」がニューヨークから来日する。あの。「神韻」といえば中国の伝統的な古典舞踊や民族舞踊などを披露する踊り子たち(に舞踊劇と独唱、独奏を加えた一団)で、中国伝統楽器を加えた専属のオーケストラ「神韻交響楽団」がバックの演奏を担当するというので有名だが、今年の来日公演は関西には4月28日から30日、西宮北口(もろ阪急神戸線沿線)の兵庫県立芸術文化センターで上演される。

……というポスターが、今年もまた、私の庭中の庭・大阪駅前ビル「全体」に貼られたわけである。以前に私はオール中国人キャスト・中国語によるカナダ映画のポスターを第3、第2ビルで見かけたことがあるが、小学生の頃からずっと気になっていたので調べたところ、その設立背景にはあまりにも恐ろしいルーツがあるということが明らかになった。正直ここでは書けないほど恐ろしいので規制するが、前回同様、ざっくりとした設立背景とその界隈で活動する「同志」達についての話、そして肝心の「なぜ駅前ビル全体に貼ってあるのか」の考察を語る。

神韻について

2024年来日公演のポスター

神韻芸術団は2006年ニューヨークで、北米に在住する「法輪功」という気功(後述)の学習者たちが集まって設立された。本部は同市カドバックビル。彼らの目的は、「中国共産党の数十年の統治下で破壊された中国の神伝文化を復興する」ということ。翌2007年に初上演を行い、当初は90名ほどの団員が在籍していたが、2017年公演では500人あまりの団員が形成する五つの舞踊団とバックオーケストラに規模を拡大し、北米のみならずヨーロッパ、オセアニア、そして日本を含むアジアなど世界各国で巡回公演を行うようになった。初期の公演は"Chinese Spectacle"、"Holiday Wonder"、"Divine Performing Arts"などの名称で行われていたが、いつしか「神韻」に統一された。彼らの公演は毎年演目を一新して上演されており、中国古典舞踊、民族舞踊、ソリストによる演奏やオペラ歌手の独唱(アリア)など、およそ20前後の演目で構成される。各芸術団には男女合わせて約60人の踊り手が在籍しており、多人数による壮大な古典舞踊劇は主な見所の一つである。舞踊劇は、木蘭、西遊記、水滸伝、三国志など、中国の歴史・伝説上の物語を題材にしており、民族舞踊では、イ族、ミャオ族、モンゴル族といった様々な民族に伝承されてきた踊りが披露される。

法輪功界隈

そんな彼らの恐るべきルーツというのが、「法輪功(Falun Gong)」と呼ばれる、1990年代初頭に吉林省出身の李洪志が伝え始めた新気功である。法輪大法(Falun Dafa)とも呼ばれるこの気功は「真・善・忍」を中心的な理念としており、五式の動作で構成されそれを学ぶ人々(実践者)はみな「学習者」と呼ばれている。李洪志は中国本土で1992年から普及活動を行っていた。やがて1999年、法輪功の学習者数は7000万人を超えていたとされており、共産党や人民解放軍でも学習者が増えていたことから共産党政権には脅威に映ったと言われているが、当時の共産党総書記であった江沢民が法輪功に対して個人的な嫉妬を覚えたためにそれを「邪教」と定め、活動禁止を宣言した。以後、学習者達は共産党政権の権力から迫害を受けるようになり、多くが海外、特にアメリカとカナダに移住し、彼らによって神韻やザ・エポック・タイムズ、NTDテレビジョンといった団体が設立されていったのだ。この時、李洪志本人はすでにアメリカへ移住(1996年)していた。

大阪駅前ビルと神韻

そんな亡命者達のコミュニティによって生まれた「伝承を継ぎ、発展させる」という文化は、大阪駅前ビルやその周辺に点在する雑居ビルとかなり相通じる。時代の流れによって破壊された古き良き昭和の文化を継承すべく第1ビルの喫茶店「マヅラ」や第4ビルの手芸用品店「大阪サンセイ」、第3ビルの中古レコード店「カーニバルレコード」、ゲームセンター「ロイヤル」などが往時の姿を後世に残していくために頑張っているのである。